文体にまつわる3つの問題(前半)

文体にまつわる3つの問題(前半)
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「我々が文章を書くことについて考える際において最も枢要な位置を占めるのは文体の問題でありそこには句読点の処し方や漢字の使われ方にまつわる諸問題が厳然として存在するのであり自ら固有の文体を会得せしめることこそが云々」

いやー、すっごい読みづらい一文ですよね。頭にまったく入ってきません。報告書にこんな文章を載せてたら、課長から一発アウトをくらいます。

世のなかには「わかりやすい文章」と「わかりづらい文章」が存在します。もちろん、技術文書を書くうえでは「わかりやすさ」が第一となりますし、当然のことながら「わかりづらい文章」は内容を「伝える」には不適格です。大江健三郎氏のような文学者であればその複雑な文体が持ち味の一つともなりますが、もちろん技術文書はブンガクではありません。

それでは、どうして「わかりづらい文章」が生まれてしまうのでしょうか。ドイツの哲学者、ショーペンハウアーはこう述べています。

だれにもわからないように書くほどたやすいことはなく、逆に重要な思想をだれにでも自然にわかるように書くほどむずかしいことはないのである。

 

当ブログのモットーである「わかりにくいをわかりやすいへ」という言葉に秘められたむずかしさを端的に述べた文章だと思います。思想という高尚なものでなくとも、「わかりやすく」書くことって大変なことなんですね。

けれど、その「わかりやすさ」はある程度まではテクニックで獲得できるのです。今回と次回のエントリーの2回に分けて、以下の問題に焦点をあててみましょう。

  1. 文体、言い回しの問題
  2. 句読点、多かれ少なかれ……
  3. 漢字を「開く」?「閉じる」?

 

文体、言い回しの問題

「~等」「~と思います」「~かもしれません」これらの断言をさける言い回しは、読者にとって結論が先送りされ、非常にあいまいな印象を与えます。書いている本人の自信のなさからくるのでしょうか、こうした言葉使いはマニュアルにとって不適切です。

また、わかりづらい形容詞の使い方も、読者に混乱を与える要因となります。たとえば、

  1. 新しい事業所のマニュアル
  2. 事業所の新しいマニュアル

1番と2番では、形容詞が修飾する言葉に明確な違いがあります。
1番の場合、新しいのは「事業所」なのか「マニュアル」なのかが判断つきません。2番の場合は、はっきりしていますね。文脈で判断できればまだよいのですが、うっかり書いてしまいがちなだけに、十分気を付けなければなりません。書いている人間にはとっては自明のことなので、自分では気づきにくいポイントなのです。

 

英語でいう関係代名詞を使った文章も、難解さに拍車をかけます。

  1. 三階にいる担当者、彼の名前は田中というのですが、その人にこの書類を持って行ってください。
  2. 三階にいる担当者にこの書類を持って行ってください。その担当者は田中といいます。

1番と2番、どちらが自然な文章か一目瞭然ですよね。関係代名詞を使った文章はまわりくどく、句読点も多くなりがちです。

さてさて次回は、そんな「句読点」から。
知らず知らずにやってしまいがちな失敗とはいったい……

 


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