フォント、使い分けていますか?(後半)
前半では明朝とゴシックというフォントの違い・用途についてとりあげました。後半は、ひきつづきフォントの使い方についてのお話です。
可読性の「明朝」、視認性の「ゴシック」
一般的な書類では、可読性の高さが求められる本文には明朝、人をひきつける視認性の高いゴシックは見出し、というように使われることが多いでしょう。なんとなーく気分的に、そう選んでいるはずです。もしくはワープロソフトのテンプレートを使うと、必然的にそうなるよう仕組まれているかもしれないですね。
では、明朝/ゴシックならばなんでもよいのかといえば、けっしてそうではありません。世のなかには「デザイン書体」と呼ばれる、奇抜な字形を持ったフォントが存在します。みなさんのパソコンにもいくつか入っているはずです。デザイン重視のフォントは人の目をひきますが、お世辞にも判読性が高いとはいえません。へたをしたら読み間違いを誘発する危険性があります。
過剰なデザイン性が必要とされない技術資料においては、Windowsであれば「MS明朝」や「メイリオ」、Macintoshであれば出版印刷にも使用されている「ヒラギノ明朝・角ゴ」がおすすめです。なんのことはない、ただの標準的な組み合わせですが、前述の印象論を踏まえて組み合わせてみてください。読みやすさがあがること間違いなしです。
フォントの多用にもご注意を
いろんな種類のフォントが使えるからといって、メリハリをつけるためにフォントを多用してしまうと、こんどは読む人が疲れてしまいます。ちなみに今、私の手元にある文庫本を開いてみても、見出し用の太ゴシック・写真の添え文(キャプション)に中ゴシック・本文は細明朝、と大きく3つのフォントしか使われていません。
報告書やマニュアルなどの技術文書においても、2つ、せいぜい3つまでのフォントを組み合わせたほうが効果的であるといえるでしょう。
『1984年』の作者として知られるイギリスの小説家ジョージ・オーウェルは、自身の評論の中でこう述べています。
すぐれた散文は窓ガラスのようなものだ。
オーウェルの文脈からは若干外れますが、技術文書も同じなのかもしれません。文書に内在する情報や意図を正確に「伝える」こと……そのためには窓ガラスのようにクリアで読みやすい文章が大事だと思います。凝ったフォントを多用せず、こちらの目論みがきちんと「伝わる」ための読みやすいフォントを選ぶ。軽んじられがちではありますが、実はとても重要なことだったりするのです。
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