読み手目線、意識してますか?
筒井康隆氏の小説に「読者罵倒」(『原始人』所収)というトンデモな短編がありまして、タイトルどおりえんえんと読者を罵倒する内容になっています。ある意味、世界で一番読者のことを考えた小説であるといえるでしょうね。
使う人のことを考えてみよう
マニュアルだって、もちろん罵倒なんてしてはいけませんが、読者がいます。マニュアルにおける「読者」とは、実際にマニュアルに書かれたことを「操作する人」でありますし、マニュアルが扱う事柄を「実行する人」であるわけです。
実際にマニュアルを「使う人」の視点が欠落してしまうと、マニュアルはとたんにわかりづらいものになってしまいます。それはマニュアルだけではなく、報告書や会議の資料だって同じことです。上司に報告書を提出しなければならないのだとしたら、つねにその上司の顔を思い浮かべて報告書を書きますよね。読者へ、いかにわかりやすく内容を「伝える」か、それは読者というものの視点を忘れてしまってはけっして得られない態度なのです。
読者の視点を得るには
それでは、どうすれば読者の視点を得ることができるのでしょうか。いちばんの近道は、読者の具体像を設定することです。それは実際にいる身近な人間でもいいですし、架空の人物でもよいでしょう。まずはモデルをつくりあげることが大切です。
次に、読者のスキルレベルを設定します。レベルの低い人向けのマニュアルであればおのずと使う言葉もやさしいものになり、レベルの高い人向けであれば専門用語を駆使しても理解が得られます。
最後に、その読者に対して「説得的」であること。読者の理解が得られなければ、そのマニュアルの内容は無駄なものとなってしまいます。噛んで含めるように、まるで子供へ語りかけるように、わかりやすく説得する。この態度を忘れてはいけないと考えます。
読者とはペルソナのこと
コンテンツ・マーケティングの分野にも、「ペルソナ」という似た概念があります。マーケティングにおけるペルソナとは、実際にいそうな顧客の人柄をかなり細かいところまで設定した人物像のことをいいます。ペルソナを設定することにより、顧客のニーズや思考パターンを推測し、マーケティングに役立てようという目的がそこにはあります。
顧客を読者に置き換えてみましょう。読者のニーズや思考パターンを推測し、マニュアルに役立てることはなんの違和感もありませんね。読者の視点というのはこのように汎用性が高く、ゆえに重要なものなのです。
「伝える」ことの基本でもあります
物事を「伝える」にはかならず相手が必要です。
読者の視点を考えるということは、簡単に言うと「相手のことを考えましょうね」ってことなんです。むずかしいことはなにもありません。
まず第一歩として、心のなかで読者役を決めてしまいましょう。報告書だったらA課長、マニュアルだったら部下のB君……といったように。そしてかならず読者に「伝わる」ことを意識して書いてみてください。それがあなたの「伝える」努力の第一歩となるはずです。
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